甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病・亜急性甲状腺炎など)や高血圧症の原因の一つでもある原発性アルドステロン症の診断・治療を行っております。特に橋本病などの甲状腺機能低下症があると不妊や流産の原因の一つにもなるため採血検査をお勧めします。
橋本病
甲状腺機能低下症が起こる病気です。甲状腺の慢性的な炎症により腫れることが多いですが、ホルモンの量には異常がないこともあります。甲状腺ホルモンが低下してきた場合には、全身の倦怠感、寒がり、むくみ、皮膚の乾燥などの症状が出ます。また気持ちは落ち込みやすく、うつのような状態になることもあります。
・甲状腺ホルモンは低下または正常
・抗Tg抗体、抗TPO抗体などが陽性
・甲状腺の全体的な腫れ
バセドウ病
甲状腺機能亢進症が起こる病気です。甲状腺ホルモンが過剰につくられ新陳代謝が異常に高まります。体が常に全力疾走しているような状態ですので倦怠感もでます。また、汗をかくが多くなり、食事が多くても痩せるか変わらない、動悸、下痢、手足の震えといった症状があります。イライラしたり怒りっぽくなったり、不眠などの症状が出ることもあります。眼球突出は必須ではありませんが疑いのある時は専門の眼科への紹介となります。
・甲状腺ホルモンは高値
・抗TRAb抗体、抗TSAb抗体などが陽性
亜急性甲状腺炎
ウイルスなどが甲状腺に侵入し炎症によって甲状腺組織が破壊されホルモンが血液中に漏れ出てしまい一時的に甲状腺ホルモンが上昇しバセドウ病のような症状が出ます。また発熱や頚部(首)の痛みなどの症状をともないます。採血では炎症によってCRP値が上昇し、甲状腺機能の亢進を認めます。バセドウ病の自己抗体は基本的には陰性です。治療としては副腎皮質ホルモン(ステロイド)となりますが、発熱や痛みなどの症状が改善していることを診察で確認し、再燃を起こさせないためには慎重に減量していくことが大切です。
潜在性甲状腺機能低下症
潜在性甲状腺機能低下症の患者様で特に補充治療が望ましいのは妊娠を希望する方や妊娠中の方です。体外受精や顕微受精などの生殖補助医療(ART)を受ける方はTSH<2.5μIU/mLとすることが推奨されています。また甲状腺自己抗体陽性でTSHが基準値上限の潜在性甲状腺機能低下症の場合は、流早産などのリスクが高くなる可能性があり甲状腺補充療法がリスクを軽減させると言われています。一方で、自己抗体陽性かつTSH<2.5μIU/mLの場合や、自己抗体陰性かつ2.5μIU/mL≦TSH(≦基準値上限)の場合は、流産などの何らかの妊娠リスクは予想されるものの、介入の有効性は十分とはいえません。しかしながら欧米の各種学会ガイドラインを踏まえ、挙児希望の女性に少しでもメリットが期待できる場合には、柔軟に治療を考えるべきと思われます。
妊娠3ヵ月まではTSH≦2.5μIU/mL、それ以降はTSH≦3.0μIU/mLを目標に、TSHとFT4を毎月測定し補充量を調節します。